3. 競争戦略



特定の事業分野において、競争優位を築くための戦略になる。
「ポーターの競争戦略」
「コトラーの競争地位別戦略」
から説明していく。




ポーターの競争戦略

ポーターの競争戦略とは

マイケル・E・ポーターの競争戦略はいかに利益を確保するかを重視する。

そのために
〇 儲かりうる市場を選ぶ「5フォース分析」
〇 儲かる位置取りを取る「3つの基本戦略」
を決める。


ケイパビリティ(=組織の能力)はそのポジショニングに合わせて強化していくという考え方で [ ポジショニング>ケイパビリティ ] となることから「ポジショニングアプローチ」と呼ばれる。




5フォース分析

業界の収益性に影響を与える5つの競争要因から業界構造の分析をおこなう。
ここでの業界とは、同業他社だけでなく収益を争うすべての相手を指す。


5つの競争要因




1.業界内の既存企業間競争

すでに参入している企業間の競争行動が激しくなれば、結果として価格競争になる。つまり利益が下がる。
既存企業間の競争が激しくなる要因は以下となる。

1.競争企業数が多い
2.競争企業の多様性
3.業界の成長力が低い
4.付加価値あたりの固定費用、または在庫費用の高さ
5.撤退障壁が高い
6.生産力が高い
7.商品やサービスの差別化が困難

2.新規参入の脅威

業界への参入障壁が低い場合、競争行動が激しくなる。

3.代替品の脅威

代替品へのスイッチングコスト、相対的な価格、顧客の傾向などの関係により、既存の商品やサービスとの競争が激しくなる。

4.売り手の交渉力

供給業者の数や供給力、代替品や特許等の差別化の程度、供給企業による垂直統合などの売り手の交渉力は脅威となる。

5.買い手の交渉力

顧客の規模や購買力に集中比率、垂直統合、スイッチングコストにより、値引きやより良いサービスの要求などの買い手の交渉力は脅威となる。


業界の収益性に影響を与える5つの競争要因すべて、または一部の要因に働きかけることで収益性を向上させる。
ポーターはそのための手段として「3つの基本戦略を」示した。



3つの基本戦略

ポーターは、業界内でどのように競争優位を築くかという競争優位の戦略として、3つの基本戦略を提起している。

差別化戦略

同種の商品やサービスにおいて、価格以外の点で優位性を築く戦略になる。
差別化をおこなう手段には、以下の例がある。


1.商品に関すること
多機能化・高級化といった品質、デザイン・包装といったブランド化などで差別化をおこなう。


2.サービスに関すること
配送無料、独自の保証制度などの差別化をおこなう。


3.認知度を高めること
宣伝広告に有名人を起用、企業名やCIによる象徴的なイメージでの差別化をおこなう。

差別化がなされなければ、または差別化できない商品やサービスであれば、需要と供給のバランスにより価格のみの競争(価格競争)となる。
また、コモディティ化が進行しても差別化が困難となり価格競争となる。
差別化が難しい現在では、リーダー企業の優位性が保たれてしまう。買い手にとって魅力的な独自性をどのように設けていくかが課題となる。


コストリーダーシップ戦略

同種の商品やサービスにおいて、コスト優位を築く戦略になる。
規模の経済性や経験曲線効果を得て、低コストを実現する。
「低コスト」とは、安売りのような低価格戦略ではなく、低い費用や原価という意味になる。代表的な例として以下の2点がある。


1.規模の経済
スケールメリットを得ることで、単位当たりの平均費用が減少し、収益性が向上すること。


2、経験曲線効果
累積生産数の増加により、単位当たりの平均費用が減少すること。




集中戦略

差別化戦略やコストリーダーシップ戦略は広い市場や顧客をターゲットにいる。
集中戦略とは、特定市場・特定顧客に経営資源を集中し、差別化戦略かコストリーダーシップ戦略を選択すること。









コトラーの競争地位別戦略

コトラーの競争地位別戦略とは

同業界内の競争地位を市場シェア率によって、4つに分類する。




リーダー企業の戦略定石

1.周辺需要の拡大
市場のパイを拡大させること。
需要が拡大すると最大シェアをもつリーダー企業が1番の利益を得ることができる。

2.同質化戦略
競争企業の差別化戦略に対し、類似の戦略を採用することで競争企業の差別化を無効にする戦略のこと。

3.非価格対応
競争企業の低価格競争に対応すれば、最も損失が大きくなるのは最大シェアをもつリーダー企業となる。
そのため、リーダー企業は価格以外の面で対応をとることとなる。

チャレンジャー企業の戦略定石

1.市場シェアの獲得
市場シェアを奪いトップシェアを目指す。
市場シェアを奪う対象はリーダー企業だけでなくフォロワーも対象となる。

2.差別化戦略
リーダー企業とは異なる製品やサービスを目指すこと。
リーダー企業が優先していない、または苦手な分野を選択する。
低価格などのリーダー企業が選択し難い戦略を採用し、同質化を無効化する。